中国は古来より統一された多民族国家である。新中国成立後、中央政府によって識別・確認された民族は56を数え、うち漢民族が最大の一族で人口総数の91.51%を占める。他の民族は人口が少なく、総数の8.49%しかないことから、「少数民族」と称される。主に内蒙古自治区、新疆ウイグル自治区、寧夏ホイ族自治区、広西チワン族自治区、チベット自治区、雲南、貴州、青海、四川、甘粛、遼寧、吉林、湖南、湖北、海南などの地区や省に分布する。
中国の少数民族はそれぞれ鮮明な特徴を持つ。人口が比較的多いのはチベット族、ウイグル族、ホイ族、ミャオ族、チワン族、モンゴル族などである。
チベット族は主にチベット自治区と青海、甘粛、四川、雲南などの省に住んでいる。言語はチベット語を使用。梵語の一部文字を参考にして7世紀前に作られた左から右へ綴る表音文字である。楷書体(ウチェン)と草書体(ウメー)の二つの書体があり、チベット族の居住地全域で通用する。
チベット族の衣装は長い袖にゆったりしたウエストと前合わせの特徴を持つ。女性は冬は長袖、夏は袖なしのチュバを着用し、下には様々な色のシャツを着用する。また、腰にはカラフルな模様のエプロンを纏う。チベット人は「哈達(ハダ)」をこよなく愛し、最も珍重されるプレゼントとされている。
「ウイグル」とはウイグル族の自称であり、「同盟」の意味がある。複数のルーツを持ち、主要なのは二つ。一つはモンゴルの草原に住む回紇人、もう一つは新疆南部のオアシスに住む原住民である。840年に大規模な合流が発生し、16世紀初頭に至って完成した。ウイグル族はその長い歴史の中で勤労と知恵で優秀な文化を創造し、独特な民族風情を形成した。
ウイグル族は主に新疆ウイグル自治区の天山以南のカシュガル、ホータンとアクス、コルラなどに居住し、天山以北のウルムチ、イリなどにも一部住んでいる。数は少ないものの湖南省の桃源と常徳、河南省の開封と鄭州にも居を構えている。ウイグル族は独特な文化と芸術を持つ。民話集「アーファンティー」や音楽舞踊叙事詩「十二ムカム」、ウイグル族舞踊などは国内外で広く知られている。
ホイ族は中国の少数民族の中で人口が多い民族の一つである。主に寧夏ホイ族自治区に居住している。新疆ウイグル自治区、青海、甘粛、陝西、山西、河北、天津、北京、上海、江蘇、雲南、河南、山東、内モンゴル自治区、遼寧、吉林、黒竜江などにも居住エリアが少なからずある。
ホイ族の衣装は鮮明な民族色がある。居住エリアであれば、伝統衣装を着飾る人々をよく見かけることができる。最も分かりやすい特徴は、男性がかぶる小さめの白い帽子と女性がかぶる鮮やかな模様の頭巾。ホイ族人がこよなく愛する伝統飲料のお茶は、食生活の重要な一部である。日常的な飲み物である一方、客をもてなす際には最も珍重される飲み物でもある。
ミャオ族は中国の多くの省や自治区、直轄市に分布しているが、主な居住地は貴州省。それ以外に人口が10万を超える省・自治区として、雲南、湖南、湖北、広東、重慶、四川、広西チワン族自治区がある。
ミャオ族は独自の言語を有し、漢蔵語族ミャオ・ヤオ語派に属する。音楽や舞踊の歴史が長く、ミャオ族の人々に広く親しまれている蘆笙踊りがある。ミャオ族が誇るクロスステッチ、刺繍、錦織り、ろうけつ染め、アクセサリー制作などの工芸美術は美しく多彩で、世界中に名を馳せている。
チワン族は中国の古い原住民族の一つで、人口が最も多い少数民族である。主に広西、広東、雲南、貴州に分布する。
チワン族は手織布の生地を使って多種多様なデザインの服を作る。女性は普段は青みがかった黒の服を着用し、ズボンのすそは少し広げ、頭を綾織のタオルのようなもので包み、腰には精緻なデザインのエプロンを巻いている。一方、多くの若い男性は前ボタン式の上着を着て、腰に紐を結ぶ。
チワン族は山や水の近くに居住することを好む。山紫水明に点在する木造家屋がチワン族の伝統的な民家である。どんな家屋でも中心線の奥まった位置に神棚が置かれる。神棚のある庁堂では祝典や社交活動を行い、両端の部屋には人が住み、その後ろが生活エリアとなる。生活は暖炉の周りが中心で、毎日三度の食事はここでとっている。
「蒙古」とは蒙古人の自称で、「不滅の炎」の意味。モンゴル族は主に中国の内蒙古自治区に居住し、一部は新疆、遼寧、吉林、黒竜江、青海、甘粛、寧夏、河南、河北、北京などの北方地域に居住する。西南地域の四川や雲南などにも少数ではあるものの生活している。
蒙古族は代々草原に居住している。牧畜業を生計とし、「水と草を求めて移動する」遊牧生活を送る。そのような生き方は現代社会で弱体化しているが、蒙古族のシンボルとされていることは変わらない。
モンゴル族の衣装は装飾品、デール、帯、ブーツの4つのアイテムからなる。デールは年齢男女問わず愛用され、長い遊牧生活で定着した独特なスタイルである。現在は祝日や集会の時のみ着用される。デールは袖が長くゆったりとし、スリットはない。襟が高く、前合わせの右側にボタンをつけている。襟先や袖口、ヘムには花柄があしらわれている。男性のデールは青か茶色、女性のデールは赤や緑、紫色が多い。